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アトツギ甲子園で熱意が形に— 後継者の自覚とSHIPのサポート
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静岡県が運営するイノベーション拠点「SHIP」では、地域における起業支援や新規事業開発、DX支援、
デジタル人材やイノベーション人材の育成を目的とした多様な支援を行っています。
本シリーズでは、SHIPを活用し成長・発展を遂げた起業家や企業、プロジェクトの事例を通じて、
SHIPが果たす役割と効果をご紹介いたします。
皆さまの今後のSHIP活用のヒントになれば幸いです。ぜひご覧ください。
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富士市を中心に製紙機械の新規製作や既存機械のメンテナンスを行う株式会社斎藤鐵工所。
同社の6代目のアトツギである齊藤雄大さん(現・代表取締役社長)は、アトツギ甲子園に
出場することで大きな変化を経験したといいます。
アトツギ甲子園とは、中小企業の後継者(アトツギ)が、自社のリソースや強みを活かした
新規事業や経営戦略を発表するビジネスコンテストです。
https://atotsugi-koshien.go.jp/
今回、齊藤さんがアトツギ甲子園に出場した理由や、SHIPからのサポートについて伺いました。
創業100年を超える老舗の鉄工所
斎藤鐵工所は今年で創業107年目を迎える富士市の鉄工所です。
事業としては、富士市の地場産業である製紙業に関連した各種機械の製造、修繕や改造、
メンテナンスなどを行っています。弊社は設計から製作、最終的な組み立てまでを一貫して行っていますが、
このような一連の機能を有する工場は希少であり、その点が大きな強みだと考えています。
お客さまは富士市以外に、岐阜県、福井県、新潟県、埼玉県といった製紙業が盛んな地域にもいらっしゃいます。
ただ、何かあった際にすぐに対応できるという点で、地場での取引拡大に力を入れているところです。
理想と現実のギャップに苦しんだ過去
斎藤鐵工所の社長を務める父の姿を見て育った私は、十代の頃にはすでに、将来的に
事業を継ぐことを意識していました。そのため、たとえば経営者となることを見据えて
進学先を考えたり、経営の糧となる就職先を選択しました。
大学卒業後は中小企業融資を中心に行う政府系金融機関に就職。
丸10年経ち、一通りの経験が得られたと感じたタイミングで斎藤鐵工所に入社しました。
会社では金融機関時代に培った経験を活かし、社内の財務や営業業務を中心に取り組んでいました。
ところが、斎藤鐵工所に入社してから2年が経った頃、自分の考える方向と社内の動きに
ギャップを感じるようになりました。また、上手くいかない自分がいる一方で、かつての同僚が
活躍している様子が眩しく見えてしまうこともありました。
そのような理由から、私は一度会社を離れ、かつて勤めていた金融機関に戻った時期もあります。
しかし、あらためて外に出たことで「自分が本当にやるべきことは何か」を考えるとともに、
自分自身を見つめ直すきっかけとなりました。
また父の体調が思わしくなかったことも相まって、再び斎藤鐵工所に戻ることを決意しました。
覚悟を固めるためのアトツギ甲子園
あらためて斎藤鐵工所に戻ったわけですが、どこかで覚悟を固める必要があると感じていました。
ちょうどそのタイミングで、中小企業の後継者によるビジネスコンテスト、
「アトツギ甲子園」への出場を決めました。
きっかけは、前回のアトツギ甲子園ファイナリストの方とお話ししたことにあります。その方の経営に
向き合う姿勢や覚悟の深さに衝撃を受け、「自分には足りないものがある」と感じたことをよく覚えています。
そこで、アトツギ甲子園へ出場することで、自らにプレッシャーをかけるとともに、周囲に対しても
「本気でこの会社を引っ張っていくぞ!」という意思を示そうと考えたのです。
結果として、第5回 アトツギ甲子園では全国大会にまで進出することができました。
このチャレンジは、私にとっても会社にとっても大きな転機となりました。人脈も一気に広がり、
甲子園を通じたご縁から仕事につながるケースも出てきました。さらには、私のピッチを見た方が
「この会社で働きたい」と言ってくださることもありました。
このような成果を得られたのは、何よりもSHIPの相談員のみなさまのお力添えがあってこそだと感じています。
スタートアップ支援だけではない
アトツギ甲子園に出場するうえで、自分の覚悟を示すことももちろん重要でしたが、それ以上に
「結果を出すこと」が大切だと考えていました。
そのためにはやはり、事業に対する想いや今後の方向性を明確にする必要がありました。
同時に、ビジネスピッチそのものを磨き上げなければいけません。
専門的なスキルを持った方とつながれないだろうか——そんなことを考えていたタイミングで、
とあるイベントにおいて、当時SHIPの相談員だった阿部さんと出会いました。
阿部さんに「ピッチのブラッシュアップに詳しい方を探している」とお話ししたところ、
その場でSHIPの相談員である北川さんをご紹介いただきました。阿部さんのおっしゃった
「うちの北川なら間違いないです」という言葉は今でも覚えています。
もともとSHIPの存在は知っていましたが、「スタートアップ支援の場」というイメージが強く、
自分のような立場では縁がないものと思い込んでいたところがあります。
そんな中でご縁をいただけたのは本当に幸運でした。
SHIPが一丸となって支えてくれた
北川さんには、ピッチの練習に8回も付き合っていただきました。練習の進め方は非常にシンプルでした。
まず、その時点で自分が考える最善の内容を北川さんにぶつけ、フィードバックをいただく。
そしてその内容を自分なりにブラッシュアップして、また実践さながらにピッチをする——その繰り返しでした。
最初の頃は、自分自身の考えがまだ整理しきれておらず、「本当は何がやりたいのか」
「自社の強みとは何なのか」といった根本的な部分から、丁寧に対話を重ねていただきました。
回を重ねるごとにフィードバックの具体性は高まっていきました。たとえば、話の構成や伝え方、
強調すべきポイントなど、ピッチの質に関わる部分まで細かくアドバイスをいただくようになりました。
時には「自分が審査員だったら、ここが気になるけれどどう思う?」と北川さんに問いかけられ、
考えの未熟な部分が浮き彫りになることもありました。北川さんご自身もピッチに登壇されたり、
審査員として関わっていた経験もお持ちだったからこそ、このような実践的な視点から
アドバイスをいただけたのだと思います。
予選大会や決勝が近づくにつれ、頻繁に時間を割いて付き合ってくださいました。
また、壁打ちを重ねるごとに、自分の中の熱量も高まっていきました。
北川さんも私の本気度を汲み取ってくださり、ますます熱意をもってご助言いただきました。
決勝直前には、玉城さんや五十嵐さんにも練習に加わっていただき、初見の方がどう感じるかという
視点からもチェックを行いました。本当に、SHIPのみなさんが一丸となって支えてくださったおかげで、
ここまでやり切ることができたと感じています。
これだけの高いスキルを持った方々が、自分の相談に真摯に向き合ってくださったことに、心から感謝しています。
通常であれば、お金を払ってお願いするようなレベルのアドバイスばかりだったのではないでしょうか。
アトツギ甲子園で描いた世界観を目指して
アトツギ甲子園出場を通して、会社として、個人として「これからどう進んでいくべきか」
という方向性が見えてきました。
今後はまず、足元をしっかり固めることが重要だと考えています。既存事業の中にも、まだまだ
伸ばせる余地があると感じており、その部分を強化するために営業活動や見せ方の工夫など、
基本的な部分を丁寧に取り組んでいきたいと思っています。
加えて、想いやビジョンに共感してくれる若い世代をどんどん迎え入れ、組織としての厚みを増して
いくと共に、既存事業を深掘りしながら、もう一つ新たな柱となる事業も育てていければと思います。
その先に、アトツギ甲子園で描いた“目指す世界観”があると信じています。
これからもきっと、新たな課題が生まれてくると思います。
そうした時には、またSHIPのみなさんに相談させていただきたいです。
〈アトツギ甲子園の様子〉
https://www.youtube.com/live/YREmfHk24Cw?si=WYa9DYkTyQhb1ryZ
SHIPを活用しないのはもったいない
SHIPは「つながる場所」だと思っています。
自分と同じような立場のアトツギの方々と出会えるのはもちろんのこと、金融機関の方や、
いわゆる「支援者」と呼ばれる方々ともつながれる貴重な場がSHIPです。
今後も交流の場として、積極的に活用させていただきたいと考えています。
また、私の場合、ビジネスピッチという側面で相談をさせていただきましたが、事業承継や
経営における悩みなどにも一緒に向き合ってくれる方々がSHIPにはたくさんいらっしゃいます。
迷ったらぜひ相談してみてほしいです。
SHIPの支援の手厚さと有用性を実感した一人として、
「これを活用しないのは本当にもったいない」と、心から思っています。
より多くの方にSHIPの価値を知っていただけたら嬉しいです。
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