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トピックス 2025年09月05日

社会人との接点で広がる探究の世界 -SHIPが支えた高校生の挑戦-

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静岡県が運営するイノベーション拠点「SHIP」では、地域における起業支援や新規事業開発、DX支援、
デジタル人材やイノベーション人材の育成を目的とした多様な支援を行っています。
本シリーズでは、SHIPを活用し成長・発展を遂げた起業家や企業、プロジェクトの事例を通じて、
SHIPが果たす役割と効果をご紹介いたします。
皆さまの今後のSHIP活用のヒントになれば幸いです。ぜひご覧ください。
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静岡県立静岡高等学校(以下、静岡高校)では、生徒自らが問いを立て、それに基づいて調査・研究、論文を作成する「卬高探究(探求学習) 」に取り組んでいます。

この度SHIPは、静岡高校の職員の方から協力依頼をいただきました。

SHIPが相談をいただいた背景や、社会人との交流を通じて学びを得た生徒の体験、さらにこの活動に社会人サポーターとして参加したSHIP会員の海野氏(静岡銀行)からお話を伺いました。

社会人との関わりで探求を深める

 

静岡高校 教諭 山本尚徳氏

本校の生徒たちは、一年次に問いの立て方を学んだ後、各々の興味・関心あるテーマに対して問いと仮説を設定します。それを検証するために文献研究や実験、アンケート調査などを行い、最終的に探究活動の過程や考察を論文としてまとめていくという「卬高探究(本校での「総合的な探究の時間」の名称)」を行っています。

 

https://www.edu.pref.shizuoka.jp/shizuoka-h/doc/2025052800024/

 

テーマが多岐にわたる卬高探究を行う中で、生徒たちの旺盛な知的好奇心に応えていくためにも、さまざまな分野で活躍されている社会人の方々にご協力をいただきたいと考えていました。

 

そんな折りに、学校関係者の方からのご縁でSHIPをご紹介いただき、校長と担当者で相談に伺いました。すると、静岡高校OB・OGのSHIP会員の方々に対し、生徒の学習を支援していただけるよう声をかけていただけることになりました。

 

結果として、2学期始めに行った「仮の問い発表会」と2学期末の「論文のアウトライン発表会」に、約20名の会員の方々にご参加いただき、多角的かつ我々教員とはまた違った視点からアドバイスをいただくことができました。また、6名の方には「伴走者」という形で、約7回の授業にご参加いただきました。

 

ご協力いただいた方々には、生徒の探究上の悩みに対して、きめ細かなアドバイスやご指導をいただきました。この経験は、生徒たちにとって大変貴重な学びの場となりました。

 

SHIPコミュニティマネージャーの玉城さんには、打合せの際に多方面からのアドバイスをいただくとともに、会員の方々との連絡調整など、細部に至るまでご配慮いただきました。

 

SHIP会員の方々、相談員の方々にこの場をお借りして御礼申し上げます。誠にありがとうございました。

 

言葉のルーツに迫る研究

静岡高校2年生 浦野優悟さん

 

僕は探求学習の中で「あか」という言葉のルーツや意味、派生について調べました。

 

テーマ選びのきっかけは、古文に興味があったためです。論文のテーマを決める前から、言語学の視点で題材を選ぼうと考えていました。ただ言語学といってもさまざまな分野があるので、どのような基準で題材を選べばいいのか悩んでいました。

 

そんな時、何気なく国語辞典を見ていたら、はじめの方にある「あか」という言葉が目に入ってきました。そこでふと、同じ「あか」から始まる言葉でも、色の「あか」もあれば「明るい」の中の「あか」があるな、と思ったんです。

 

同じ音素を持つ言葉が、どのような変遷を辿って現在の言葉に分岐したのか、その歴史を深掘ってみようと思ったのが研究の出発点になります。

 

アプローチの仕方は大きく分けて二つ。一つは「あか」という音素を含む言葉をまとめること。もう一つは、その言葉たちが大きな一つのルーツを持つと仮定した場合、どのような言葉に行き着くのか、です。

 

結論として、「あか」という言葉の根っこには「赤みを帯びた光」という意味があったようです。

 

たとえば、夕日は赤く見えますよね。そのように、かつて光は赤みを持つものと考えられていたそうです。つまり、「光の差している明るい状態」が「あか」のルーツのようです。

 

最終的に、もっとも興味のあった奈良時代のデータを中心に論文を組み立てていきましたが、論文のテーマが壮大すぎて、すべてを詳しく調べられなかったのが心残りです。春休みの課題としては、もう少しスモールステップを意識した方が良かったと感じています。いずれ時間のあるときに、個人的に調べてまとめられればと思っています。

 

社会人サポーターがつないだ専門家との縁

論文を書くにあたって、伴走していただいた社会人サポーターの海野さん(静岡銀行)には大変お世話になりました。

 

まず僕は、論文を書くこと自体が初めてでした。もちろん、基礎的な書き方や構成のノウハウもまったくありませんでした。

 

その点において、「研究の過程や構成を明確にしたほうがいいのではないか」というアドバイスをいただいて、はっとさせられました。おかげで結論のはっきりした論文になったと思います。

 

また、海野さんが古文の研究をされている先生とつないでくださったことで、研究が大きく前進しました。

 

オンラインで先生に、論文の構造や文献からの引用方法、具体的な言葉の変遷についてお伺いさせていただきました。テーマのまとめ方についても大変参考になる助言をいただきました。

 

今回僕は、言語の変遷について研究をしましたが、一つの言葉を調べるにしても、文法や意味、音素など、さまざまな観点からのアプローチが考えられます。そのすべて書いてしまうと焦点がぼやけてしまいます。どれか一つに論点を絞り、それに沿って論じていくと良いと教えていただきました。

世界の広さを知る機会になった

探究学習での経験はとても貴重なものだったと感じます。

 

問いを立てて、それをまとめ、伝えるという一連のプロセスに、一年かけて取り組めたことは自分にとって重要な意味があったと感じています。まだまだ納得できていない部分も多いですが、大きな達成感を得られました。

今回得た知識が勉強の役に立つかどうかは、正直わかりません。古文の勉強には役立ったと思いますが、授業や受験に出る範囲は大きく超えています。

 

志望の学部も工学系なので、大学に入ってからも研究の中心にはなりにくいと思います。

 

ただ、興味を持って図書館に通ったり、辞書を開いてみたりする行為は、読書や学習のハードルを下げてくれました。また、直接試験結果につながらなくても、自分の人生を豊かにしてくれると感じています。今後も趣味として、言語学と長く付き合っていければと思います。

 

多くの社会人の方々や専門家の先生とお話しできたのも心に残る出来事となりました。同時に、これまで自分がいかに狭い世界に生きていたかを思い知らされました。

 

世の中にはいろいろな職業の方がいて、いろいろな知識や経験がある——そういったものを素直に受け入れ、深く知っていくことで大きく成長できるのではないかと思います。これからも好奇心を絶やさず、積極的に人とつながっていきたいです。

 

社会人サポーター(SHIP会員)の声

静岡銀行 海野裕晃さん

 

SHIPの玉城さんから「ぜひお願いします!」とお声掛けいただき、静岡高校の探究活動に参画しました。
今回の探究学習において、社会人サポーターには「伴走者」と「助言者」という二つの役割がありました。

 

伴走者とは、学校を訪れて生徒のみなさんにアドバイスをする役割です。これを一年間で5、6回行いました。もう一つの助言者とは、夏休み明けに生徒のみなさんが考えたテーマを聞き、フィードバックを行う役割です。今回はこの二つの役割を通じ、生徒のみなさんの進捗に応じたアドバイスを行いました。

 

私は伴走者として、浦野さんの研究のお手伝いをさせてもらいました。

 

じつは現在、私も大学院の修士課程に通っており、修士研究として論文執筆をしています。そのこともあり、浦野さんを研究仲間のように感じていましたし、その研究の着眼点や頑張りにも感銘を受けました。

 

研究では質の良いフィードバックをもらうことがとても大切です。浦野さんにも古文に関する専門的な知識を持った方からのフィードバックを受けられる機会をつくってあげられないかと考え、大学院の繋がりから古文を専門とされる先生をご紹介しました。先生との対話で浦野さんの学びが深まり、研究の質が高まったとのことで、大変喜ばしく思っています。

 

私も静岡高校OBですし、社会人になってからも自ら興味を持って学びつづけることの大切さ実感しています。そうした背景もあり、今回、母校に自分の人脈やノウハウを共有することで、生徒のみなさんの学びを支援できたことを光栄に思います。

 

今後もSHIPには、意欲のある生徒さんと社会人が関わり、ともに学び合える場が生まれていく機会の創出を期待しています。

 

静岡県立静岡高等学校

 

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