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トピックス 2025年10月30日

静岡発の挑戦を支える場として ー井出さんとSHIPが描く地域の未来

静岡県と連携するオープンイノベーションイベント「TECH BEAT Shizuoka」。

2025年の開催では、178社ものスタートアップが静岡に集結。さらに、県内の挑戦者が登壇する「挑戦者ピッチチャレンジ」や、基調講演・トークセッションといったセミナー企画も実施。参加者同士の交流や新たな連携が生まれる場として機能しています。

今回、企画や運営に携わる静岡銀行の井出雄大さんから、SHIPからのサポートや活用方法についてお伺いしました。

 

事業における井出さんの担当

私が主に取り組んでいるのは「TECH BEAT Shizuoka(以下、TBS)」です。

TBSとは、静岡県内の事業者と首都圏を中心とするスタートアップ企業とのビジネスマッチングを通じて、その両者のオープンイノベーションにより、静岡県内の経済・産業の活性化を目指すためのプロジェクトです。

静岡銀行と静岡県が共同で取り組んでいるプロジェクトであり、毎年7月下旬の大規模イベントに加え、県内の各地域で年間を通じて小さなイベントを開催しています。

2019年の12月、私が地方創生部に着任してからこの事業を任されるようになり、これまで開催された11回のイベントのうち、10回を担当してきました。

TBSの開催にあたって一番に意識していることは、「いかに当事者になってもらうか」です。ピッチやトークセッションを聞いてくださった方、ブースでスタートアップの可能性を知ってくださった方などが、「自分も何か新しいことや共創に挑戦してみよう!」と一歩を踏み出すきっかけとなる場にしたいと考えています。

そのため、セッションに登壇される方々にも「行動変容につながる内容にしてください」と事前にお願いしています。

また、首都圏のスタートアップと、地方の企業で事業に取り組んでいる方とでは、スピード感やカルチャーに違いがあることも少なくありません。そうしたギャップをできるだけ減らすことも意識しています。

 

挑戦する人を応援したい

私が所属する地方創生部は、金融以外のネットワークやアセットを活用して、地域のお客さまに貢献することをミッションとしています。

取り組みは幅広く、産業振興・まちづくりから、生産者と販売者をつなぐ商談会の開催、郷土愛を育む子ども向けプログラム「しずおかキッズアカデミー」の実施に至るまで、多岐にわたります。

https://www.shizuokabank.co.jp/corporation/management/regional-co-creation/

その中で私は、事業者等の新たな挑戦を後押しするとともに、地域でそうした取り組みが促進されるようなエコシステムづくりに注力しています。

地方銀行は、地域とともに共存共栄していく関係にあります。実際、「地域のために何かしたい」という気持ちを持って入行している人が多い印象があります。

それに加え、私はTBSのようなプロジェクトに携わる中で、新しい事業に挑戦したり、時代に合わせてビジネスをアップデートしようと奮闘している方々の姿を間近で見ることで、地元静岡で挑戦する人たちを応援したいという気持ちが一層強くなっていきました。

 

SHIPが想いを伝える場になった

SHIPと直接連携したのは「TECH BEAT Shizuoka 2024」の前夜祭が最初です。

「一緒にイベントを盛り上げてください」とお願いしたところ、すぐに趣旨をご理解いただき、イベントの見所やオープンイノベーションの基礎知識を伝えるトークセッションを開催してくださいました。

https://ship-shizuoka.jp/events/detail/1931/

自分たちが「なぜこの取り組みをしているのか」という想いを伝える貴重な機会となり、大変ありがたく思っています。

また、今年7月のイベントで試行した「挑戦者ピッチチャレンジ」でも、SHIPから登壇者を推薦していただきました。こちらも非常に好評で、聴講者の中から「自分だったら何ができるだろうか」と考えてくださる方や、一緒になって会場を盛り上げてくださる方も多く見られました。

 

「ここに来れば何かが起こるかもしれない」という期待感

TBSには静岡県内各地から多くの方々にご参加いただいていますが、まだまだ会場のグランシップがある東静岡駅周辺に閉じたイベントになっている印象があります。

今後は、静岡駅周辺や中心市街地との連携をより深め、静岡全体で取り組んでいるイベントとして認知され、その熱や学びが地域に還元されるようにしていきたいです。

そうした意味でも、静岡の中心街にあるSHIPは重要なハブになると考えています。

私たちの取り組みは、イベントという性質上、一過性で終わりかねない懸念があります。その点でも、SHIPのような交流拠点にご協力いただけることは、継続性を生み出すうえで大きな意味を持ちます。

社会全体に共創の風土や挑戦の連鎖を広げていく”うねり”のようなものを生み出すためにも、常設の場は欠かせません。

さらに、SHIPにはコミュニティマネージャーやコーディネーターが常駐されていらっしゃいますし、「ここに来れば何かが起こるかもしれない」という期待感のある場所として、重要な役割を担っていると考えています。

私個人の活用方法としては、興味のあるセミナーや会いたい人がいるときなど明確な目的がない場合でも、近くに来た際にふらっとSHIPに立ち寄るようにしています。

さまざまな方と交流を通して新たな知識や考え方に触れることで、オープンイノベーションの“種”のようなものが見つかることもありますし、「この人とあの人をつなげたら面白いことができそうだな」とひらめく瞬間もあります。

そういった体験がとても心地いいんです。

 

やりたいことを受け入れてくれる

私にとってSHIPは、「やりたいことを受け入れてくれる場」です。

自分のやりたいことや想いがあっても、さまざまな事情ですぐには実行できないことがあります。

SHIPではそんな時でも、アイデアや企画を柔軟に受け止めてくれるんです。

イベントづくりなどの場面でも、経験豊富な方々がたたき台の段階から相談に乗ってくださいますし、相談員の 北川さんのようにスタートアップに深く関わってきた方から、「こういう見せ方のほうが伝わりやすい」とか「この切り口に変えたほうがいいかもしれない」といった具体的なアドバイスをいただけるのも心強いです。

たとえばSHIPには、TBS以外でも「アトツギ支援」の協力もお願いしました。「アトツギ」とは、先代から受け継いだ価値を時代に合わせてアップデートしようとする地域企業の後継予定者を指し、今は中小企業庁が実施する「アトツギ甲子園」に挑戦する方々の応援に注力しています。

アトツギにもスタートアップの経営者と同じように、素晴らしいビジョンを持って挑戦されている方がたくさんいらっしゃいます。そうした方々の活動の輪が広がっていくことは、間違いなく地域の力になると感じています。

アトツギ甲子園プレピッチイベントの様子

一方で、そういった取り組みは広く知られる機会が少なく、それが協力者や共感者が集まりにくい一因にもなっていると感じます。

そこで、SHIPが持つコミュニティをお借りできればと考え、アトツギの挑戦を知らしめるイベントを開催したいとお願いしました。

SHIPは当初、スタートアップ支援の傾向が強かったのですが、私が上記のようなアトツギとの共通点をお話ししたところ、すぐに理解してくださり、同じようにサポートしてもらえるようになりました。

その柔軟さと対応の速さは、取り組みを広げていくうえでも大きな後押しになったと感じています。

 

一歩踏み出す人をみんなで応援する静岡へ

今後も引き続き、TECH BEAT Shizuokaやアトツギの応援を通じて、これまであまり注目されてこなかった、企業の挑戦やそのプロセスにスポットライトを当てていきたいと考えています。

そして、それを知った誰かが「自分も挑戦してみよう」と一歩を踏み出し、そんな動きをみんなで応援する”空気”がある静岡をつくっていきたい。「あの時にかけてもらった一言がきっかけで行動できました」とか、「あの時に紹介してもらってよかったです」といった言葉を、後からいただけることが何よりも嬉しいんです。

 

変わっていくこと、変わらないこと 〜井出さん×SHIP〜

ここからはSHIP相談員の北川、コミュニティマネージャーの玉城を交えての鼎談となります。

今後のSHIPの方向性や活用方法について話し合いました。

 

井出さんは「何かをもたらしてくれる人」

北川

私から見ると井出さんは「何かをもたらしてくれる人」という印象が強いです。言うなれば、「パイオニア」という言葉が一番しっくりきます。

「アトツギ」というキーワードをSHIPに根づかせたのも井出さんでしたし、TBSの取り組みも非常に先進的で、しかも毎年アップデートを重ねていらっしゃいます。

その中でSHIPにも積極的にパスを出してくださる。「ピッチの登壇者いますか?」とか「一緒に前夜祭をやりましょう」といったお声がけをいただくことで、SHIPにも新しい風を吹き込んでくれました。

井出

それもSHIPの皆様が私の言葉を受け止めてくださるおかげです。

これからもいろいろと相談させてください。

 

キーパーソンへパスを出す役割

北川

先ほど井出さんもおっしゃっていましたが、これからのSHIPは、具体的な取り組みやアクションにつながるような動きを重視していく段階に入っていると感じています。すでに事例はありますが、さらにそこに焦点を当て、目立った事例をどんどん出していきたいです。

知事の旗振りのもと、地域全体の気運も高まってきています。その先には起業家の増加や、トヨコーさんのようにIPOを一つの目標に据えて成長していける企業を輩出していく流れをつくっていきたいと考えています。

https://ship-shizuoka.jp/2025/07/11/2819/

そうした全体を俯瞰して見たとき、SHIPとしてはこれから起業を考えている方や、起業して間もない方など、早い段階にある方々への支援やマッチングのサポートがメインになります。

そのうえで、ある程度勢いに乗ってきた方々を、井出さんをはじめとする次のステップへのキーパーソンとなるような方々に積極的にパスしていければと考えています。

SHIPにはないネットワークを通じて商談やビジネスにつなげていただいたり、それこそTBSのような舞台に登壇する機会を提供していただいたり、そのような橋渡しの役割を担うことが私たちの使命だと感じています。

 

大手・レガシー企業を巻き込むために

玉城

ネットワークを広げていくためにも、大手企業やレガシー企業の方々を巻き込んでいく必要性は強く感じています。ただ一方で、そういった方々に対してSHIPの活用方法を具体的に提案していく部分には、まだ課題があると感じています。

井出

そういった方々はSHIPとの接点が少なく、使い方もスタートアップや中小企業の方々と違いますよね。

こうした拠点の性質上、すぐに目に見える成果が生まれるわけではないので、その利用価値を理解してもらうのは難しいかもしれません。でも実際には、ふとしたきっかけから新しいイベントが立ち上がったり、思わぬ出会いから次の展開につながることも少なくないと思います。

そうしたSHIPの持つ“偶発性の価値”をどう伝えていくかは、一工夫が必要だと感じています。

玉城

飲みニケーションと通じる部分があると思います。実際にやってみると得られるものや意味は大きいのですが、「その時間を別の仕事に充てられたのでは?」と聞かれると、なかなか反論しづらい。

北川

たしかに、来ていただくための理由づくりは重要だと感じています。

たとえば社員の方々が勤務時間でSHIPを利用したとして、「何のために行ったの?」と会社から説明を求められたとき、答えやすくしてあげるべきだと思っています。

そのためにも、SHIPに来ることで得られるベネフィットや、ここにある機能・仕組みを具体的に伝えることが求められますね。

玉城

得られるベネフィットや機能・仕組みを伝えることに加えて、SHIPをはじめとした関係企業が本気で取り組んでいる姿を見せることが大切かもしれません。

私たち自身が情熱を持って取り組んでいる様子を見てもらうことで、「きっと行く価値があるに違いない」と感じてもらえるはずです。

そうした空気づくりが、SHIPに興味を持つ入口になるのではないかと思っています。

 

変わらないでほしい

井出

SHIPに対して新たに求めることは……とくにありません(笑)

これまですでにたくさんのものをいただいていて、むしろこちらが何かをお返ししなければいけないと感じているくらいです。

しいて言うなら、「変わらないでいてほしい」ということでしょうか。挑戦を後押ししたり、成長を加速させたりする機能や、温かみのある空気感、人と人とをつなげてくれる関わり方を、変えることなく続けていっていただきたい。

ただ、継続こそ一番難しいことでもあります。外からの圧力やしがらみ、さまざまな声に左右されることなく、今のスタンスを貫いていただきたいです。

北川

「変わらないでいてほしい」という言葉は、本当にありがたいですね。

私自身、SHIPはある意味で“インフラ”の一種だと考えています。もちろんすべてではありませんが、水道やガスのように、地域にとってなくてはならない機能を担っているという自負があります。

新しい取り組みを継続的に打ち出していくことは大切ですが、井出さんの言葉を聞いて、改めて「変わらずにいることの価値」を強く感じました。

井出

変わっていくこと、新しい取り組みを進めていくことは、その場をお借りする私たちの仕事です。ぜひ静岡のイノベーション創出を牽引する場として、そこにあり続けてください。

 

 

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