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トピックス 2025年11月28日

プロダクト先行から学生起業へ Azran×SHIPが生んだ成長ストーリー

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静岡県が運営するイノベーション拠点「SHIP」では、地域における起業支援や新規事業開発、DX支援、
デジタル人材やイノベーション人材の育成を目的とした多様な支援を行っています。
本シリーズでは、SHIPを活用し成長・発展を遂げた起業家や企業、プロジェクトの事例を通じて、
SHIPが果たす役割と効果をご紹介いたします。
皆さまの今後のSHIP活用のヒントになれば幸いです。ぜひご覧ください。
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静岡理工科大学の学生3人によって設立された株式会社Azran(アズラン)。

主に動画マニュアルのWebサービスを扱う同社ですが、そのビジネスプランは学生ピッチコンテストでも最優秀賞を受賞し、華々しいスタートを切りました。

その背景には、SHIPの相談員によるサポートの存在があったといいます。

今回、代表取締役の山中碧音さんに、SHIPの活用方法や学生起業のメリットについて伺いました。

作ったものを世に出すために学生起業

Azranでは「ビデオ de マニュアル」という、中小の製造業企業向けの動画マニュアルWebサービスを取り扱っています。

文字中心のマニュアルではなく、業務手順や操作方法を動画で学ぶことができます。実際の作業の様子や画面操作を映像で示せるため、文章だけでは伝わりにくい細かな動作や流れを直感的に理解できます。また、多言語翻訳もあるので、言語による疎通が難しい外国人労働者の方々にも対応できます。

僕らの場合は、起業よりも先にプロダクトが生まれました。作ったものを世に出すために会社が必要になったんです。

大学の研究室に「大学の技術を使って業務課題を解決できないか」という相談が持ち込まれたのが「ビデオ de マニュアル」誕生のきっかけです。相談内容は、磐田の製造業の会社からで、発注書や請求書などの社内書類を一元管理できないか、というものでした。

僕の所属していた研究室に話が回ってきて、学生メンバーで課題に取り組むことになったのですが、その過程で、業務マニュアルにも大きな課題があることが見えてきました。

そこで、「せっかくならマニュアルもデジタル化してみよう」という流れになり、Webマニュアルのプロトタイプを作ることになったんです。

プロトタイプができ、企業への導入を検討していただいた際、「学生個人との契約は難しいので、法人として契約したい」と言われ、そこで初めて「起業」という言葉がリアリティを持ちました。

ただ、その時点では「会社ってどうやって作るの?」というレベルで、ビジネスの基礎知識はゼロ。完全に手探り状態でした。

そんなときにお世話になったのがSHIPです。相談員の北川さんをはじめ、SHIPの方々には、ビジネスの基礎の基礎から丁寧に教えていただきました。あのときのサポートがなければ、今の自分はなかったと思います。

相談員の言葉で事業への向き合い方が変わった

SHIPのスタートアップ相談員制度は、起業する半年ほど前に知りました。

ちょうど学生向けピッチプログラム「ASHIGARU PITCH」に出場しようとしていたタイミングだったので、起業の仕方に加え、ピッチのブラッシュアップにもご協力いただきました。

ビジネスプランコンテスト自体も初めてだったので、スライドの作り方から教えていただきました。「最後のスライドは手書きがいい」というアドバイスはずっと自分の中に残っていて、今でもスライドを作るときは、必ず最後に手書きの要素を入れるようにしています。

おかげさまで、「ASHIGARU PITCH」では最優秀賞、さらに、SHIP会員の挑戦を後押しする「SHIPアワード2023」でも大賞をいただきました。

https://www.ltg-startupstudio.jp/ashigaru-pitch

ビジネスについても本当にいろいろなことを教えていただきました。とくに印象的だったのは「SaaSビジネスは3要素からできている」という言葉です。プロダクト・営業・カスタマーサクセスの3つが揃ってこそ、SaaSは成長し続けるサービスになるんだ——そんなことを熱量を持って伝えてくださいました。

「とにかくサービスを売ればいい」と思っていた当時の自分には衝撃的で、事業への向き合い方が大きく変わるきっかけになりました。

北川さんもお忙しい中、いつも嫌な顔ひとつせずフランクに接してくださいました。本当にありがたかったです。メールで相談した際もすぐに返信をいただけて、何度も助けられました。今思うと、失礼なこともあったんじゃないかな(笑)

やはり、北川さんご自身が起業されていて、かつ企業にも所属しているという、僕と似た環境にいらっしゃるので、お話の一つひとつがとても勉強になりました。起業の先輩からいただく言葉は、重みと説得力が違いますね。

SHIPを通じて新たな可能性に気づけた

SHIPアワード2023で大賞をいただいたことで、想像以上に多くの方に知っていただけるようになりました。

掲示されていたアワードの様子を見た方から「あの山中くん?」と声をかけられたり、「サービスが気になって連絡しました」とお問い合わせをいただいたりして、SHIPの発信力の大きさに驚かされました。

そこから一気に、これまでになかった出会いが広がっていきました。受賞を機に、スタートアップ業界で若手育成に携わる方や、第一線で活躍する起業家の方々など、多様な方とつながることができました。

お問い合わせの幅も広がりました。以前は製造業が中心でしたが、最近ではホテル業や農業関係の方々からもお声がけをいただくようになり、新たな可能性に気づくこともできました。

現在は、動画のアップロード時間の短縮や自動翻訳による作業負担の軽減など、細かな改善を重ねています。

その一方で、デジタルツインやVR・XRといった技術を活用した新しいサービスの構想も進めています。まだアイデア段階ではありますが、自分たちのできる範囲から社会をよくしていければと思います。

経営をしつつ会社員をする理由

会社経営しながら別の会社の社員として働いている理由は、大きく二つあります。

一つは、大学を卒業するまでにAzranだけで生活できるほどの収入を得られなかったという現実的な理由です。

もう一つは、会社を大きくしたいという野望からです。会社を大きくするには組織づくりや経営をしっかり学ぶ必要があると感じていました。今勤めている会社はスタートアップで、まさに急成長の真っただ中にあります。将来、自分が経営者としてさらに成長していくためにも、この環境を経験しておきたいと思ったんです。

そういった学びをしっかり糧にして、できるだけ早くAzranを軌道に乗せたいです。

最近は仲間たちから「学生インターンを受け入れたい」「新卒採用もやってみたい」という声も出てきました。僕自身、インターンや起業に興味のある学生に、挑戦の機会やリアルな経験をしてもらいたいという想いがあります。

そうした想いを実現するためにも会社を育てていきたいと思っています。

もっともリスクの低い起業のタイミングは…

「学生起業」というと、ハードルが高く感じられるかもしれません。でも実際のところ、人生の中でもっともリスクを小さく挑戦できるのは学生時代ではないでしょうか。

社会人になってから起業を考えると、仕事の忙しさや家庭の事情などもあり、つぎ込めるリソースが限られてきます。そんな中で事業計画を練るよりも、学生生活の余白を活かして、低リスクで挑戦できる環境の方がよほど合理的です。

また、「学生」という立場もアドバンテージになります。社会人の方々も親身になってアドバイスをくれますし、応援されやすい。そのように学びながら挑戦できるのが、学生起業の魅力だと考えます。

仲間がいたから踏み出せた

学生起業家の方々や起業に興味のある学生さんたちとは普段からよく交流しています。たまたま会った学生さんに「山中さんですよね?」と声をかけてもらって、そこから話が広がることもあります。ちょっと先輩風を吹かせています(笑)

最近は、静岡の学生の中でも「起業したい」という人がかなり増えてきた印象があります。「大学に入ってすぐ起業しました」という話もよく聞くようになりました。ある意味では後輩のような存在なので、起業仲間として、自分が経験したことは積極的に伝えていきたいと思っています。

「起業に向いている性格ってありますか?」と聞かれることも多いですが、僕は特別な資質は必要ないと思っています。いろいろな起業家の方と出会う中で、「やっているうちに起業していた」という人もいれば、「お金を稼ぎたくて始めた」という人もいます。本当に人それぞれ。「気づいたら起業していた」くらいの感覚の人もいます。

僕だって、最初から起業しようと思っていたわけではありません。挑戦が得意なタイプでもなかったですし、自分ひとりだったら、たぶん踏み出せなかったと思います。ただ、仲間たちの「やっちゃえ」という言葉に背中を押される形で「じゃあ自分もやるか」と流れに乗っただけでした。

仲間たちとの出会いも大きな転機でした。大学の研究室がフリースペースのような雰囲気で、そこで出会った3人と一緒に起業しました。もともとは普通の友達で、開発や学生団体の運営を一緒にしていくうちに、自然とビジネスパートナーになっていきました。

お互いに刺激し合って、ときには追い抜き、追い抜かれながら、一緒に走っている感覚です。やるからには負けたくない、という気持ちも正直あります。

もう無理かもしれないと思ったときにも、「あと少しだけ踏ん張ってみよう」と思えるのも仲間の影響が大きいと思います。

SHIPには”居場所”になってほしい

静岡の学生の中には、「起業したいけれど何から始めればいいかわからない」といったモヤモヤを抱えている人も多いと思います。SHIPにはそうした想いを受け止め、成長を後押しするとともに、同じ志を持った仲間たちが集まれる”居場所”になってほしいです。

また、学生だけでなく、社会人たちにももっとSHIPを利用してほしいです。ユニークな経歴の方や、面白い事業をされている方など、ここには魅力的な人がたくさんいます。SHIPにいる人と少しお喋りして帰る……くらいの交流でも十分に価値があると思います。

SHIPは、すでに僕にとって大切な居場所になっています。

大学を卒業して一つ拠点が減った感覚がありましたが、SHIPには卒業がありません。その安心感があるのは大きいですね。これからもSHIPには積極的に顔を出していきたいと思っています。

Azranの方も、これから新たなビジネスに着手するとともに、ひとつのスタートアップとして本格的に歩み始めます。その時にはまた、SHIPで情報発信させていただきますので、今後ともよろしくお願いします。

 

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