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テクノロジーで豊かさや幸福度の向上を目指す株式会社nu.
______________________________________________静岡県が運営するイノベーション拠点「SHIP」では、地域における起業支援や新規事業開発、DX支援、デジタル人材やイノベーション人材の育成を目的とした多様な支援を行っています。本シリーズでは、SHIPを活用し成長・発展を遂げた起業家や企業、プロジェクトの事例を通じて、SHIPが果たす役割と効果をご紹介いたします。皆さまの今後のSHIP活用のヒントになれば幸いです。ぜひご覧ください。______________________________________________
同社は紐型のセンサーを活用し、スポーツやエンタメで新しい体験価値を生み出す取り組みを進めています。
今回、代表取締役 今田雅さんに、SHIPからのサポートや活用方法について伺いました。

テクノロジーで生きる喜び・生きている体感を創出する
今田さん
私たちは「身体感覚とテクノロジーを融合した体験設計によって生きる喜び・生きている体感を創出する」というミッションのもと、事業を展開しています。
その実現に向けたコア技術の一つが、関西大学の田實(たじつ)教授が発明された「圧電組紐センサー」です。これは柔軟性の高い糸状のセンサーで、既存のファブリックや衣類などに縫い込むことでセンサー機能を付加することができます。
この技術をどのように社会実装していくかを考えたとき、着目したのがスポーツでした。
デジタル技術やAIが急速に進化する中で、身体感覚や感情の発露が「人間らしさ」の根源にあるのではないかと私は考えます。それを自然な形で計測・可視化できる場として、スポーツやエンターテインメントは非常に親和性が高いと感じました。
ドラマチックで予測不能な出来事が目の前で展開されるスポーツの価値が、昨今見直されつつある中で、応援そのものも一つのコンテンツになっていくのではないかと考えています。
田實さん
「センサー」と聞くと、スマートフォンやパソコンのような電子機器を想像される方が多いと思いますが、このデバイスは紐そのものがセンサーになっている点が大きな特徴です。
また、特定の用途があらかじめ決まっているわけではなく、たとえば今回の今田さんのように「スポーツに活かせそうだ」という発想から応用することもできます。
すでに、睡眠の質を向上させるデバイスや、誤嚥性肺炎の検知システムなどへの活用も進んでいます。

静岡ブルーレヴズの新たな文化をつくる
今田さん
SHIPの支援もあり、2024年よりプロラグビーチーム「静岡ブルーレヴズ」での実証実験が始まりました。
センサーを内蔵したタオルを振ることで、その熱狂度がスタジアムのビジョンに映し出されるアトラクションを導入していただきました。
https://www.shizuoka-bluerevs.com/news/2767
コンテンツに関しても、スマートフォン上で応援パワーを確認できたり、誰が一番タオルを振っているかといったランキングを表示できるなど、エンタメ性は年々向上しています。
ラグビーは“紳士のスポーツ”とも言われ、静かに熱狂するイメージが強かったため、当初はタオルを振るような応援スタイルが根づくかどうか懸念もありました。
しかし今では、すべてのファンが自然にタオルを振るようになりました。応援のタイミングも浸透しており、もはや私たちが特別な働きかけをする必要もありません。
まさに、タオルを振る応援スタイルがブルーレヴズの文化の一部になりつつあるのです。
現在では実証実験の枠を超え、多くの来場者へタオル配布が行われています。すべてにセンサーが入っているわけではありませんが、「応援の文化はつくれる」という手応えを得ることができました。
さらに、試合中の応援動作を計測することで、どの場面で盛り上がりが高まったのか、どのタイミングで変動したのかを可視化できます。こうしたデータは、今後のコンテンツ設計や演出づくりのヒントにもなるのではないかと考えています。

テクノロジーで願いがつながり合う
今田さん
事業を始めたきっかけには先生との出会いもありますが、何より大きかったのは、この技術開発のストーリーに強く共鳴したことです。
新海誠監督の映画「君の名は。」をご存じでしょうか? 先生はこの映画から圧電組紐センサーの着想を得たとお話しされていました。
物語の中で、糸を編んでつくられた組紐が主人公とヒロインをつなぐ象徴的なアイテムとして登場します。
物理的なアイテムを通して願いがつながり合う世界をテクノロジーで再現できるかもしれない——そんな先生の想いが衝撃的で、ワクワクしました。
とくにスポーツにおいては「応援しているチームに勝ってほしい」「選手に力を届けたい」といった感情が自然に生まれます。その願いを届けることができる技術として、このセンサーは非常に相性が良いと感じました。
そうした想いの重なりが、今回の事業へとつながっています。
SHIPがハブとなり実証実験へ
今田さん
SHIPとは、広島のイノベーション創出拠点「イノベーション・ハブ・ひろしまCamps」を通じてつながりました。
https://www.camps-hiroshima.jp/
同拠点の運営にもSHIPと同様に株式会社エル・ティー・エス(以下、LTS)さんが関わっており、そこからご縁が広がっていきました。
当時の私たちは、まだ小規模な実験を重ねている段階でした。そのような状況で、私たちが直接スポーツチームにアプローチしても受け入れてもらうのは難しかったと思います。
しかし、信頼のあるSHIPがハブとなってくださったことで、実証実験の機会を得ることができました。
中島
じつはLTSとしても、静岡ブルーレヴズからスポンサーのお話をいただいていました。ただ、従来型のスポンサーシップにとどまるのではなく、もう一歩踏み込んだ関わり方ができないかと模索していたタイミングでした。
そうした中で今田さんと出会い、「スポーツ×テクノロジー」という形でのイノベーションを打ち出せるのではないかと考えるようになりました。
また、静岡ブルーレヴズは、スタートアップ支援コミュニティ「SEEEAs Shiuoka」にも加入されています。
https://seeeas.shizuoka.jp/Players/Members/BlueRevs
こうして、ブルーレヴズと先端テクノロジーを持つスタートアップを掛け合わせ、その取り組みをLTSのスポンサー施策と融合させる構想が生まれました。
ブルーレヴズのみなさんも前向きにアイデアを出してくださり、これは良い施策になるぞと確信しました。

SHIPからの後押しで起業を決意
今田さん
中島さんのご縁で、メディアやスポーツ系エンタメ事業を展開する起業にもつないでいただきました。おかげさまで、他のスポーツチームから実証実験のお話もいただけました。
私たちだけではキャッチしきれないネットワークを広げていただき、本当にありがたいです。
起業においても、中島さんからの後押しがありました。
それまでは、システム自体はできていたものの、実証の場がありませんでした。言ってしまえば、個人的な趣味の延長のような形で取り組んでいたんです。
それがスポーツチームでの実証実験へと発展し、さらに背中を押していただいたことで、「これは事業として形にできる」と覚悟が固まりました。
先端技術を活用したスポーツ事業に採択
今田さん
今後はタオルの取り組みを個々のチームにとどまらず、リーグ全体へと波及していきたいです。この仕組みを応用すれば、チーム同士の応援合戦のような新しい楽しみ方も生み出せるでしょう。
また、スタジアムに足を運べない人でも、リモートで応援に参加できる形をつくりたいと思っています。
どちらのチームの応援がより激しいか、どの地域のファンが熱量を生み出しているのかなどをタオルによって可視化し、観戦体験を広げていきたいです。
中島
今田さんの事業は、静岡県スポーツ政策課が公募していた先端技術を活用したスポーツ事業に採択されました。
また、スポーツ分野では「静岡SOIP(スポーツ・オープンイノベーション・プラットフォーム)」という、スポーツ領域のオープンイノベーションを推進する仕組みづくりが始まっています。
https://www.pref.shizuoka.jp/kankosports/sports/1068241/1075901.html
今後は、そうした動きとも連携しながら、より広い枠組みの中で関わっていければと考えています。
悩んでいるなら早めに相談
今田さん
SHIPで相談する際は、できるだけカジュアルに声をかけることを意識しています。
壁打ちや相談は、「こんなこと聞いていいのかな?」と悩んでしまうことがありますよね。でも、悩んでいるなら早めに相談したほうがいいと思っています。時間がもったいないですし、なによりSHIPは無料ですから(笑)
中島
イノベーションを起こす方には、今田さんのように気軽に話してくださる方が多い印象があります。組織や役職の違いを取っ払い、あくまでフラットに、事業やサービスの価値そのもので議論できる関係が理想です。
事業の内容がまだ具体的に固まっていなくても、まずは話しに来ていただければ十分です。実際、「アウトプットできてすっきりした」とおっしゃる方は少なくありません。
新しいことに挑戦しようとしている方ほど、一人で考え込んでしまいがちですが、少し壁打ちをするだけでも気持ちが整理されますし、話しているうちに考えが具体化していくこともあると思います。そういう場としてSHIPを活用していただければ嬉しいです。

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