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トピックス 2026年03月27日

自動車部品メーカーがカニの自動養殖に挑む理由 エフ・シー・シーの新事業を加速させたSHIPの「リバースピッチ」

______________________________________________静岡県が運営するイノベーション拠点「SHIP」では、地域における起業支援や新規事業開発、DX支援、デジタル人材やイノベーション人材の育成を目的とした多様な支援を行っています。本シリーズでは、SHIPを活用し成長・発展を遂げた起業家や企業、プロジェクトの事例を通じて、SHIPが果たす役割と効果をご紹介いたします。皆さまの今後のSHIP活用のヒントになれば幸いです。ぜひご覧ください。______________________________________________

自動車部品メーカーがカニの自動養殖に挑む理由 エフ・シー・シーの新事業を加速させたSHIPの「リバースピッチ」

2輪バイク向けクラッチで世界有数のシェアを持つ自動車部品メーカー、株式会社エフ・シー・シー(以下、FCC)。同社は現在、世界的なEVシフトを見据え、自社の製造業・ロボット技術を活かした浜名湖の名産でもある「ドウマンガニ(ノコギリガザミ)」の自動養殖という、全くの異業種への新規事業に挑戦しています。

事業立ち上げから4年目を迎え、社内での立ち位置に苦心していたプロジェクトを次のフェーズへと強烈に後押ししたのが、SHIPが企画した企業側が課題を発信し、スタートアップに提案を求める「リバースピッチ」でした。

異業種への参入でどのような壁にぶつかり、SHIPをどう活用して突破口を開いたのか。同社の土屋さんと原さん、そして伴走支援を行ったSHIP相談員の北川さんにお話を伺いました。

クラッチがなくなる未来を見据え、行き着いた「カニの自動養殖」

土屋さん

弊社は2輪バイク向けのクラッチにおいて世界有数のシェアを持つメーカーです。しかし、EVシフトが進んでいくとクラッチという部品自体が不要になる可能性があるため、それに代わる新しい事業領域をさまざまなジャンルで探索しています。

最初は水産業にフォーカスし、食料の安定供給という観点から「虫由来タンパクを使った養殖餌」の事業を考えていました。しかし、私たちのビジネススタイルから考えて「餌だけ」を供給するモデルは、「クラッチはいらない」と言われるのと同様に、お客様に「餌はいらない」と言われた瞬間に成立しなくなる脆弱な構図であることに気づきました。そこで、1から10まで自分たちで養殖して育てるモデルに切り替えました。

原さん

さまざまな養殖の可能性を探る中で水産技術研究所などと連携しながら検討を進め、たどり着いたのが浜名湖などで知られる「ドウマンガニ」の養殖でした。

土屋さん

実はカニは、1匹ずつ仕切りを入れた個別のスペースで飼育しないと、縄張り争いによって共食いが起き、個体数が減少してしまいます。各区画に餌をあげるのは手作業では手間がかかりすぎて事業化が難しいのですが、逆に言えば、これこそが「ロボットで世話をする」という私たちの技術に最も適した課題でした。ロボットが自動で餌を供給し、状態をモニタリングする。製造業の力で水産業の課題を解決できると考えたのが、カニを選んだ最大の理由です。

局面を打開する一手「リバースピッチ」が4年目のプロジェクトを救う

土屋さん

2021年の事業立ち上げから4年目を迎え、異業種参入という難易度の高いチャレンジゆえに、社内での事業継続の根拠を示す必要が生じていました。そんなタイミングでSHIPの中島さんや北川さんからお声がけいただき、浜松のイベントで「リバースピッチ」に登壇することになりました。

今振り返ると、このリバースピッチがなければプロジェクトの継続は難しかったかもしれません。社外のイベントで発信し反響を得たことで、社会的な期待値が高まり、社内でもプロジェクトの意義が再認識されました。その結果、事業としての立ち位置を確保することができました。

北川相談員

リバースピッチに向けて、まずは土屋さんや原さんから断片的な資料やこれまでの歩みを伺い、それをもとにプレゼンのストーリーラインを組み立てていくサポートをさせていただきました。

当初は農業系ITソリューションなど複数の案がありましたが、本番直前まで比較検討を重ねた結果、スタートアップとのマッチングの親和性とインパクトを重視し、「カニの養殖」1本に絞ってピッチに臨む決断をしていただきました。

原さん

既存事業とあまりにも異なる分野のため、社内だけで進めようとすると「この予算を何に使うんだ」とブレーキがかかりやすい状況でした。だからこそ、外部のパートナーを見つけるために、自分たちの活動を外に向けて発信する必要があったのです。

異例のスピードマッチングで手に入れた「現場実装力」

土屋さん

リバースピッチを経て、ピッチでご提案いただいたストラウト社とは協業に向けた具体的な検討を進めているところです。同社は実際に現場で魚を育てる「現場オペレーション」のノウハウを持っています。私たちがシステムや品質を維持する仕組みを構築し、彼らが現場で実践していくという形で、互いに不足している要素を補い合える非常に良い関係が築けそうです。

アトツギ社長のノウハウで挑む、水産養殖業の再成長(ストラウト記事)

https://ship-shizuoka.jp/2025/08/14/2954/

北川相談員

FCCさんとの出会いからピッチ当日までは、およそ3カ月というスピード感で進みました。FCCさんの本気度が高かったこともあり、私としても非常にやりがいを持って伴走することができました。また、ストラウトさんのように「現場実装力」に強みを持つスタートアップと精度の高いマッチングが実現できたことは、今回の大きな成果だと思います。

今後の展望とSHIPへの期待

土屋さん

中長期的には海外展開も視野に入れています。日本ではカニの産卵は夏に限られますが、同種のカニが生息する海外であれば通年で実験が可能です。そこで開発サイクルを高速化し、最適化モデルを確立したうえで浜名湖へ還元し、地域産業に貢献したいと考えています。

今回、SHIPのリバースピッチを活用し、大きな手応えを感じました。通常の展示会では来場者の関心にばらつきがありますが、リバースピッチでは事前にこちらの文脈を理解したスタートアップが集まるため、精度の高いマッチングが可能です。

大企業が「こういうことを実現したい」と外部に発信し、最適なパートナーとの連携を構築できるこの仕組みは素晴らしいです。今後も、別の新規事業などで、SHIPのリバースピッチを活用していきたいと思っています。

 

 

 

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